リチャード:ハミルトンの『インテリア』シリーズは、様々に
室内の光景を変化させて作品を展開させていたが、このアイディア
の源がダグラス:サーク監督の映画「ショックプルーフ」(1949)
であった。リチャード:ハミルトンが映画を観てとかではないらしい。
映画の宣伝用に撮影した写真を見てハミルトンは反応した。
ハミルトンはニューカッスル大学の美術学部で教鞭をとっていた。
彼の担当は初年度学生向けの基礎デザインという、自分の思考、
方向性を学生たちが白紙から探っていく授業。ある年度の授業で
コラージュの実習をおこなった時、素材として映画関連のチラシ、
ビラ、ポスターなどを学生たちにいろんなところから集めさせたこと
があったらしい。
その中に映画「ショックプルーフ」の宣伝写真が、ヒロインのパトリシア:
ナイトが、部屋の中で不可解な不穏性で立っている写真がハミルトンを
魅了した。不可解というのは、広角レンズで撮影されているため、室内の
遠近法に歪みが生じ、おびただしい部分照明が奇妙な陰影をもたらして、
ただごとではない。前景右のテーブルの開けられたままの引き出しが棺桶の
ごとく巨大に見え、その引き出しの線の先の中央へ視線を動かすと、床に横
たわった男の死体がある。ハミルトンのポイントは、テーブルの足によって男
の顔が額に飾られたように見えることだった。
写真にあった死体めいたものは、赤と緑のまだら模様として、床に平面化されて
置かれることになる。
キネマ旬報10月上旬号記事からの抜粋です。

